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集えない状況下で文化をつくれるか ( #ディレクター日記 2020/04/20)

東京都の文化支援策に関するニュースが早朝からFacebook上に流れて来た。今日15日の補正案に数億規模でその項目があるという。(*1 2020年4月15日東京都報道発表資料「令和2年度4月補正予算(案)について 別紙・経済活動と都民生活を支えるセーフティネットの強化」より「文化芸術活動の幅広い支援5億円」)

すでに憶測を含んだコメントも散見されるも、詳細は近く公表されるはずだ。文化庁の文化芸術関係者支援の構想が美術手帖の記事で流れて来たので、文化庁のウェブサイトをあたる 。(*2 2020年4月20日文化庁「令和2年度補正予算(案)の概要」より「文化芸術関係者への支援」)と、補正予算(案)の概要と61億円とある。状況を「自粛要請期」「再開期」「反転攻勢期」と整理し、それに対応する具体的施策と配分が明示されている。確かに、2月末から文化施設は閉じたままだが、時が来れば文化施設も活動を再開する。

しかし、今はまだ、新型コロナウイルス感染拡大防止のために緊急事態宣言が発出され、その措置の真っただ中にある。つまり、自粛の名の下に行動変容を強いられている状況だ。今回のニュースで知った「行動変容」という医学用語には、一時のことではない「経験によって生じる比較的永続的な行動の変化」(*3「行動変容」津田彰・石橋香津代/日本保健医療行動科学会雑誌, 2019)ということらしい。

そして私たち は、「(感染しないために)人と距離を取ること」と突如言い渡されたのだ。この新しいルールにはそうそう馴染めない 。しかし、そうしないと自らの命を落とすか、大切な人の命を奪うことになる。

人が一斉に活動を止める。日々を彩っていた行為が「不要不急」とされ、人が移動し、交流することでもたらされていた経済活動が止まる。世界中で緊急経済対策が打ち出され、生活支援策が展開されはじめた。人の移動を押し留め、この状況を長引かせないためにだ。

自粛期間の終わりは、ウイルス感染のピークを過ぎたあたりではなく、減少傾向が続き、横ばいになった頃だ。問題はその時がいつ訪れ、晴れて「再開期」になったと言えるかだ。しかも、文化事業的な「再開期」は、そのさらに先になると思う。

肌感覚でいえば、大学生がキャンパスに集うことができず、遠隔授業を強いられている間は、文化事業の再起動は難しいように思う。その一方で、働き方もテレワーク化が進み、学びの場もリモート化し、人々のリテラシーが増した頃に、文化施設は最先端技術を活用した鑑賞環境等改善の支援を受け、新たなサービスを提供し始める流れは予測できる。文化を享受する場や関係においては、メディアの選択肢が増える環境整備の好機になるだろう。

しかし、文化の「享受」より手前、文化を創造していく「クリエイション」の場は、密度のある場を必要としている。もしかしたらこの感覚が古いと感じるつくり手もいるかもしれないが、私自身は 「集い、交わる」ことは、不可欠な要素だと思う。特に、私がこれまで手掛けてきたプロジェクト型のアート活動においては。アトリエに籠り、一人制作に没頭することで生まれる表現のみが社会に出ていくのは、自分としては忍びない。

では、どうしたらいいのだろうか。どうしたら集い、交わりながら生み出す表現を、この「集えない」状況下で準備していけるのだろうか。気は急く。だが、いたずらに急ぐことなく、できることから。

(2020年4月20日 東京アートポイント計画ディレクター・森司)

*本記事は、アーツカウンシル東京ブログ「東京アートポイント計画通信」(2020/4/30公開)より転載しています。

Photo by Trevor Dobson(CC BY-NC-ND 2.0)


ありがとうございます^^
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東京都内各地で地域NPOとともにアートプロジェクトを展開する試み。noteではプロジェクトの舞台裏での試行錯誤や、現場の記録をお届けします。 https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/creation/hubs/

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「東京アートポイント計画」のディレクターであり、「Tokyo Art Research Lab」や「TURN」、「Art Support Tohoku-Tokyo」などアートプロジェクト関連事業の統括を務めるアーツカウンシル東京・森司の日記がはじまりました。文化を取り巻く状況が大きく変わってしまった2020年4月から、正直な戸惑いと未来に向けた試行錯誤について綴っていきます。